しばらく前に「翻訳フォーラム・シンポジウム2023 ~ことばと向き合おう~」のアーカイブ動画を見終えました。
タイトルのとおり、日本語や英語といった言葉を正面から考える約6時間。
出演者の皆さんが貴重な情報を包み隠さずシェアしてくださり、大変勉強になりました。
そして、どの方からも翻訳愛を感じました。
翻訳が好きという気持ちが伝わってきて、人それぞれ向き合い方に違いはあるのですが皆さん真剣に翻訳のことを考えていらっしゃって根っこは同じなんだなと感じました。
アーカイブを見ながらさまざまな技をEvernoteにメモしました。
例えば本などを読むときに、情報が出てくるときの順序の違いを日英で比較する。
英語と日本語では情報の出てくる順番が異なるときがある。
そのパターンを知っておくことは、翻訳するときに原文と同じ順序に訳して本当に伝わるのかどうかの判断材料になる。
なるほどです!
場合によっては段落内で順序を変えて訳した方がいいかもしれない(し、それは不適切なときもある)。
このような細かなことをたくさんメモしました。
書籍の翻訳を共訳で行うときに、どのように情報を共有するかについても興味深かったです。
Googleスプレッドシートを共有などして訳語を統一させたり、調べ物の結果を共有したりしたそうです。
私は基本的にメールなので、今後のヒントを頂きました。
書籍の紹介もあり、色々と購入。
上記リンク先に一覧がありますが、たとえば"Rhetorical Grammar"(Martha Kolln/Loretta Gray著)を買いました。最新版は高価だったので旧版を。
Rhetorical Grammar: Grammatical Choices, Rhetorical Effects (5th Edition)
2007年発行の第5版。
最新版と比較していないのでどの程度変わったのかわかりませんが、英語の文法が大幅に変わることはないと思うのでとりあえずこれを読んでいます。
最初から読むのではなく、気になったところをつまみ食い。
まずはシンポジウムで取り上げられた文末焦点(end focus)について読みました。
文末焦点というのは、新情報を文の最後に置くという原則。
新規の情報と既知の情報の出し方を考えて英文は書かれていると思うのですが、新規情報を文頭に持ってこないで文末に置くのが基本なんですね。
この本ではセンテンスのリズムに絡めて文末焦点の解説があります。
その他にもパンクチュエーション(句読点)の使い方などシンポジウムで解説のあったテーマについて解説されているので読んでいこうと思います。
比較的頻繁に改訂しているようなので以下にリンクを貼ります。
ご興味あれば古さと値段の釣り合いを見ながら検討してもいいかなと思います。
2009年版(第6版)
2012年版
Rhetorical Grammar: Grammatical Choices, Rhetorical Effects: International Edition
2014年版(第7版)
2016年版(第8版)
Rhetorical Grammar: Grammatical Choices, Rhetorical Effects
文末焦点についてシンポジウムで学んだり、この本の該当箇所を読んだりして疑問に思ったのは、英語って文の最初に重要なことを書くものではなかったの?ということ。
できるだけ文頭に大切なことを書くべきだということを習った気がするので、手持ちの本で確認してみました。
Google 英文ライティング: 英語がどんどん書けるようになる本
遠田先生の本は何冊か持っていて、この本は少し古いのですがGoogleとは関係なく英文ライティングについて役に立つと思います。
ここに英文ライティングのセルフチェックの方法が書いてあって、そのひとつが「文頭の5語に下線を引く」というもの。
「英語は先に結論を述べる言葉」なので「文頭にどれだけ多くの情報が含まれているか」を確認して、できるだけ要点を先に書くようにするということ。
でも本を読み返してみると、それはたとえばThere areやIt is necessary toのような情報が少ない言葉を最初に持ってこないという意味でした。
この辺りとごちゃ混ぜになってしまったので、もう少ししっかりと"Rhetorical Grammar"を読んで理解を深めたいと思います。
文末焦点について日本語の文法書に書いていないか少し調べてみると、『現代英文法講義』にありました。
文末焦点(end focus)と文末重心(end weight)についての解説があります。
約900ページもある分厚い本。ロイヤル英文法(青ロイヤル)を少し分厚くして二回りほど判型を大きくしたサイズ。電子版はありません。
でも、どこにも見つからなかった情報がここで見つかって助かることがあるので重宝しています。いざというときに頼れる一冊です。
シンポジウムではこの他にも言葉のインプットとアウトプット、どっちも大事だけれど、「ボーッと読むのではなく『気をつけて』読む」というドキッとする言葉も聞けてよかったです。
それなりに読んだり書いたりしていると思うけれど、ボーッと漫然と読んだり書き散らしたりしている気もする、と自戒。
「気をつけて」とは。
新しい言葉を学んだときには自分で例文を作る、本を読むときに目的別に数種類の色の付箋を貼って、後で見返せるようにする、何か縛りを決めて書く……などなど。なるほどと思うことばかり。
もっと言葉に敏感でいたいし、それが楽しいと感じたシンポジウムでした。
前回のブログにも感想や各種リンクを貼りましたのでご興味あればこちらから↓
翻訳フォーラムさんのYouTubeチャンネルはこちら。
他にも本を買いましたがそれについてはまた今度。
ではまた!