翻訳者の暮らし

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翻訳者に必要なスキル:調査力(Google検索の一例)

英文を読んでいてわからない単語が出てきたらどうしますか?

 

読み飛ばすこともあると思いますが、仕事でちゃんと意味を知りたいときは辞書を引くと思います(ウェブ検索かもしれませんが、翻訳者なら信頼できる辞書を使います)。

 

 

でも、辞書を引いてみて、載っている語義ではその文脈に当てはまらないと思ったら?

 

 

先日、約1時間かけて1単語の意味探しをしたのでそのプロセスを書いてみたいと思います。

 

その単語はblotterです。

 

1. 手持ちの辞書を引く(Logophileなど使用)

(串刺し検索する辞書の一部です)

辞書を引くと、「吸い取り紙」「記録簿」「LSD」といった意味が出てきます。

 

でも、そのどれもが今回私が訳したい文脈では使えない気がしました。

 

 

2. 意味を予想する

 

同じ文にtickerという単語が出てきて、これは動画に貼る「字幕」や「テロップ」という意味だろうと考えました。

 

configure(設定する/設計する)、filter(フィルター)という単語もありました。

 

そこでblotterも動画編集関連のアプリやソフトの設定や機能に関する単語ではないかな?と予想。

 

[ここまで読んで、「あ、それってあの意味では?」とピンと来た方は、この先、自分が詳しくない分野の英単語の意味を知りたいという状況を想像して読んでください]

 

 

3. Googleで一緒に使われそうな単語と一緒に検索する



例えば今回は

 

blotter

blotter 動画

blotter 字幕

blotter テロップ

blotter ticker

blotter edit

 

などなど、想像をふくらませながら手当たり次第に検索窓に入力し、「すべて」と「画像」の結果を見ていきました。

 

調べているうちにDesk blotterやPolice Blotterといった単語も出てきて、そのたびに「机で使うもの?」「壁紙?」「警察?」と想像しながらさらに調べます。

 

 

4. Google以外で検索

 

どうもはっきりしないので、ツールを変えて、EdgeやTwitterの「キーワード検索」を使ってみました。

 

そうすると、「ブロッターアート」といったアートの一種などがよくヒットしました。

 

万年筆などを使ったときに上に載せてインクを吸い取らせる文房具などもよくヒットします。

 

 

5. さらにキーワードを加える

 

カタカナで通じるかもしれないと思いつつ、Googleに戻って、キーワードの足し算と引き算。

 

翻訳したい文章にある単語を増やしたり、減らしたり、日本語訳にしたり、英単語のままにしたり、"blotter * ticker"などとダブルクォーテーションマークやアスタリスクを使ったりします。

 

知っている方は多いと思いますが、ダブルクォーテーションマーク(二重引用符)でくくると、完全一致検索ができます。

 

アスタリスク(*)を使うとよくわからない部分が補完されます。

 

 

検索結果から見つけた単語も加えたりしながら、さらに結果を探ります。

 

検索語の順番を変えるだけで、検索結果が変わることもあります。

 

 

そうしているうちに、あるソフトのヘルプがヒット!聞いたことのない海外のソフトです。

 

こういうときは大意がつかめればよいので機械翻訳を使っちゃって、ヘルプをざっと読むと、どうやら金融関連のものだとわかりました。

 

ソフトの名前とblotterを並べて検索すると、プレスリリースもヒット。

 

ヘルプやプレスリリースにtradeという言葉が何度も出てきて、どうやらここでいうtradeは株などの取引の意味なのかとわかってきたので

 

blotter 株式取引

 

と検索してみると、ようやく念願の結果が出ました。

 

「トレードブロッター」とカタカナになって説明されている画像が複数でました。

 

その後、「トレードブロッター」だけでも検索して、複数のウェブサイトで使われていることを確認したところでほぼ1時間がたっていました。

 

「トレードブロッター(Trade Blotter)」というのは、オンライン上の取引情報レポートのことのようです。

 

最初に予想した動画関連とはまったく違いました。

 

ここから実際の訳語をどうするかはまた別問題ですが、とりあえず意味がわかってホッとしました。

 

 

<振り返り>

 

改めてblotterを辞書で引いてみると「(取引の)控え帳」「(臨時の)記録簿」といった意味があることに気づきました。これだったのですね。

 

最初に辞書を引いたとき、私は「紙」の記録簿としかイメージできなかったので、ネット検索の海にこぎ出しました(tickerやconfigure、filterなど、同じ文にあった単語にも惑わされました)。

 

「控え帳」というかなり古そうな日本語でも、現代ではデジタルの記録になっているかもしれない、と一歩想像力を豊かにできれば、もう少し速く正解にたどり着けたかもしれません(今後に向けての反省)。

 

そんなわけで、「結局辞書に載っていた!」ってことも実はそこそこあります。

 

でも、ネット検索をして、実際の使い方を見ることで、辞書に書いてある意味が腑に落ちるっていうことも多いんですよね。

 

 

 

 

金融関係についてよく知っている方ならすぐにピンときたかもしれませんが、今回、手元にある英文だけでは金融関連のソフトだということはまったく推測できなかったので、難易度が高かったです。

 

でも1時間というのはまぁ、悪くない。単語によってはもっとかかる場合も。

 

出版翻訳の場合は何日もかけて調べることもあります(もちろん他の作業も並行しつつですが)。

 

 

金融に限らず、誰でも詳しくない分野があると思うので、そのようなときに翻訳者はこんなことをしているんだという一例として読んでいただければと思います。

 

 

ポイントとしては

 

・ 一緒に使われそうな単語と一緒に検索する

 

・ 画像検索などの結果も見る

 

ということが特に大事だと思います。

 

あとは、ひたすら根気よく検索窓に打ち込む執念。。。

 

英語を入れたり、日本語を想像して入れたり、 "クォーテーションマーク" でくくったり、くくらなかったりするだけでも検索結果は変わります。

 

そして、ようやく自分が知りたかった意味を発見したときはすっきり!

 

パズルを解けたときのような爽快感です。

 

 

 

クォーテーションマークやアスタリスクなどの使い方などは、ネット検索をするとでてくると思いますが、もし、本でじっくり勉強したい場合は、以前に本を紹介しました。

 

ameblo.jp

 

 

この記事を再読したら、今回と似たようなことを書いていました(きっとその時も謎解きが成功してうれしかったのです笑)。

 

 

調べ物が苦にならないなら翻訳者に向いているかもしれないですね。

 

瞬発力より持続力がいる工程です。

 

もちろん通訳などでも下調べはしますけど、翻訳者にも調査力は必要だと思います。

 

日々、検索しているのでどんな単語を入力すればよいか、検索結果のうち、どのページを実際に見ればよいかの感覚は磨かれていっている気がします。

 

努力次第で調査力は身につくと思うし、上達すると思います。

 

 

 

 

 

 

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